相続人

子及びその代襲相続人相続人1 被相続人の子は、嫡出子・非嫡出子・養子を問わず相続人となります(民法887条1項)。出生前の胎児も相続人となりますが(886条1項)、死胎で生まれたときには、はじめから相続人ではなかったことになります(884条2項)。

2 被相続人の子が、(1)相続の開始以前に死亡したとき、(2)子に相続欠格事由が有るとき(891条各号)、(3)相続から廃除されたとき(892条)は、その子(被相続人の孫)が相続人となります。これを代襲相続といいます(887条2項本文)。また、その孫(被相続人のひ孫)が代襲相続することを再代襲相続といいます。

子が相続放棄をした場合には代襲相続は発生しない点に注意が必要です。

また、代襲相続をするには被相続人の直系卑属であることも必要です(887条2項ただし書)。したがって、養子に入る者の子でも、養子縁組前に出生した子は、養親(被相続人)の直系卑属にあたらないため、代襲相続をすることができません。

3 非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とされています(900条4号ただし書)。この規定について、最高裁は1995年7月の決定で「法律婚主義に基づいて嫡出子の立場を尊重するとともに、非嫡出子にも配慮して調整を図ったものであり、合理的理由のない差別とは言えない」として「合憲」と判断しましたが、5裁判官が平等の原則に反する等として「違憲」とする反対意見を述べていました。

その後も、最高裁判所は合憲との判断を維持していましが、父親の遺産相続を巡り、嫡出子側が東京家裁と和歌山家裁にそれぞれ申し立てた事案において、2013年2月27日に審理が最高裁判所大法廷に回付されたことから、これまでの合憲判決が見直される可能性が指摘されています。

配偶者及び内縁の妻1 配偶者は、常に第1順位の相続人となります(民法890条)。もっとも、配偶者については代襲相続が認められていません。

2 内縁の妻は法律婚をしている者ではないため、相続人となる配偶者ではなく、法定相続分は認められていません。その理由は、相続においては相続財産に関して利害関係を持つ第三者の取引の安全も考慮しなければならず、誰が相続人かは形式的に戸籍により明らかになった方がよいと考えられているためです。

もっとも、遺言や死因贈与によって遺産を取得することは当然可能です。また、相続人不存在の場合に特別縁故者として分与を受けることができ(民法958条の3)、また、財産分与を定めた民法768条の類推適用により相続人に対して財産分与請求をすることが先例で認められています。

直系尊属直系尊属は、被相続人に子がおらず、かつ代襲者も再代襲者も存在しない場合に相続人となります(889条1項1号)。直系尊属が複数いる場合には、親等の近い者だけが相続人となります。例えば、父母と祖父母がいずれも存命の場合は、父母のみが相続人となります。直系尊属については、代襲相続は認められていません。

兄弟姉妹兄弟姉妹は、子、その代襲者、直系尊属がいないときに相続人となります(889条1項2号)。兄弟姉妹についても、代襲相続は認められますが(889条2項)、再代襲相続までは認められていません。その理由は、甥姪の子とは通常親戚づき合いもなく、相続制度の根拠である生活保障の観点にそぐわないこと、また、相続関係者が広範囲になるほど複雑化するため遺産分割が長期化し、相続人に不利益である上、遺産の活用も妨げられるためとされています。

相続欠格意義相続欠格とは、推定相続人が、被相続人の財産を相続するのが正義に反すると感じられるような行為を行った場合は、当然に相続資格を失うとする制度をいいます(民法891条)。相続欠格事由には、以下5つの類型があります。

(1)故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた者(891条1号)
(2)被相続人が殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者(同条2号)
(3)詐欺または脅迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、またはその取消・変更をすることを妨げた者(同条3号)
(4)詐欺または脅迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、またその取消・変更をさせた者(同条4号)
(5)相続に関する被相続人の遺言を偽造・変造・破棄・隠匿した者(同条5号)

判例相続人が自己に有利な遺言を破棄したことについて民法891条5号該当性が争われた事案において、最高裁判所は、相続欠格の要件として、相続上有利な地位を得るという積極的な目的を必要とする立場に立ち、相続人の行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、891条5号所定の相続欠格者にはあたらないと判断しました。

また、遺言書に欠けていた押印等の方式を補充する行為は、遺言書の偽造・変造にあたるが、遺言者の意思を実現させるためにその方形式を整える趣旨でされたに過ぎないときは、欠格事由とはならないと判断しています。

相続人の廃除意義民法892条は、遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して「虐待」をし、もしくは「重大な侮辱」をし、または「その他の著しい非行」があったときは、被相続人は家庭裁判所にその推定相続人の廃除を請求することができると定めています。これを推定相続人の廃除といいます。

被相続人以外の推定相続人などが廃除を申立てることはできません。廃除の意思表示は遺言でも行うことができますが、この場合は、遺言執行者が申立人となりますので、遺言執行者はその遺言が効力を生じた後、遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をしなければなりません(893条)。

廃除審判が確定すると、廃除された者は申立人との関係で相続権を失い、遺留分も認められません。ただし、被相続人はいつでも推定相続人の廃除の取消を家庭裁判所に請求することができます。

廃除事由の判断基準廃除事由については、当該行為が被相続人との家族的共同生活関係を破壊させ、その修復が著しく困難なほどのものであるかどうかという基準で判断されます。その判断にあたっては、被相続人の主観によるのではなく、行為当時の社会的意識、倫理、遺留分権・相続権の意義との関連で客観的基準に従ってなされます(裁判例)。

また、その言動の発生原因、責任の所在、継続性の有無などの諸事情も考慮されます。被相続人の態度などに多くの原因がある場合や、双方に原因がある場合、一時的なものについては、廃除要件に該当しないとした裁判例があります。

廃除事由廃除事由に該当すると判断された裁判例として、以下のケースが挙げられます。

(1)暴力団と婚姻をすることになった娘が、父母が婚姻に反対しているにも関わらず、父の名で披露宴の招待状を出すなどした事例で、「虐待」または「重大な侮辱」にあたるとしたケース

(2)窃盗などにより何度も服役し、現在も刑事施設に収容中であるところ、窃盗などの被害弁償や借金返済を行わなかったことにより被相続人に被害者らへの謝罪、被害弁償および借金返済等の多大の精神的苦痛と多額の経済的負担を敷いてきたことが明らかであることから、その長男について「著しい非行」が認められるとしたケース

(3)被相続人の長男が、借金を重ね、被相続人に2000万円以上を返済させたり、長男の債権者が被相続人宅に押しかけるといったことで、被相続人を約20年間にわたり経済的、精神的に苦しめてきたことは、「著しい非行」に該当するとしたケース

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