留学費用の返還に関する判例

裁判所は、研修・留学の業務性を中心に、返還免除基準の合理性(基準の明確性、期間の長短等)および返還額の相当性(賃金・退職金と比較して高額に過ぎないか、勤続期間に応じて減額措置があるか)などの事情を総合的に考慮して判断しているようです。

1.業務上必要な研修であったケース(1)美容室に準職員として就職した社員が、会社の美容指導を受けたにもかかわらず会社の意向に反して退職したときは、入社時にさかのぼって美容指導料(1ヶ月につき4万円)を支払うという契約が、その自由意思を拘束して退職の自由を奪う性格を有することがあるとして労基法16条に違反し無効とされました。

(2)使用者が技能者養成の一環として業務命令で海外分社に出向させ、業務研修をさせた場合や、ビジネススクールでの研修を命じた場合などでは、業務上必要とされた研修にかかる費用として、当該諸費用の返還合意が一定期間の業務拘束を目的とした違約金の実質を持つものとして違法とされました。

2.業務に必ずしも必要とはいえなかったケース(1)留学への応募・留学先の決定などが労働者の選択にゆだねられ、留学先での学位取得が労働者の担当業務と直接には関係なく、一方、学位取得は労働者の転職には有益であるとされたケースでは、当該留学は労働者個人の一般的能力を高め個人の利益となる性質を有するとされて労基法16条違反ではないとされました。

(2)帰国後13ヶ月で自己都合退職した元社員に対し会社が留学費用の返還等を請求したケースにおいて、留学の理由内容等は会社の業務には直接的には関連がなく、汎用的な経営能力の開発を目指すもので、社員の留学は業務性を有するとされず、留学費用の金銭消費貸借の合意は成立しており、合意は労基法16条違反ではないとされました。

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