使用者に対する損害賠償請求

使用者の義務違反によって労災が生じた場合、労災補償や労災保険給付の価額の限度をこえる損害については、使用者は債務不履行責任あるいは不法行為責任に基づく損害賠償責任を免れることができません。これを、労災補償制度と損害賠償制度の併存主義といいます。

(1)債務不履行責任使用者が、労働契約上負っている労働者の生命・身体・健康を保護すべき義務(労働契約法5条:安全配慮義務)に反して労災を発生させた場合、使用者は被災労働者またはその遺族に対して、債務不履行責任に基づく損害賠償義務を負います(民法415条)。

最高裁は、安全配慮義務を、使用者が事業遂行に用いる物的施設(設備)および人的組織の管理を十全に行う義務と把握しています。そして、<1>宿直中の労働者が盗賊に刺殺された事案において、盗賊新入防止の物的設備を十分に施し、かつ宿直員の安全教育を行う等の義務の不履行があったとして安全配慮義務違反を認めたケースや、<2>長時間労働に従事する労働者がうつ病に罹患して自殺した事案において、同労働者の業務量の適切な調整等を行う義務があったとして安全配慮義務違反を認めたケース等があります。

(2)不法行為責任不法行為を定めた法律の要件にあたる事実が使用者側にある場合には、使用者は不法行為責任に基づく損害賠償義務を負います。不法行為責任は、以下3つのパターンが考えられます。

1.使用者の故意過失により労災を発生させた場合、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)
2.使用者の雇っている者の故意過失により労災を発生させた場合、使用者責任に基づく損害賠償請求(同法715条)
3.土地工作物の設置・保存の瑕疵により労災を発生させた場合、工作物責任に基づく損害賠償請求(同法717条)

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