特別受益

特別受益の意義特別受益共同相続人になされた被相続人からの遺贈、または婚姻・養子縁組のための贈与、あるいは生計の資本としての贈与を総称して「特別受益」といいます。

特別受益たる遺贈ないし贈与を受けた者がいるときは、相続人間の公平を図るため、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその遺贈ないし贈与の価額を加えたものを遺産とみなし、相続分の中からその遺贈ないし贈与の価額を控除した価額をもってその者の相続分とされます。これを特別受益の「持戻し」といいます。

なお、被相続人が遺言などで持戻免除の意思を表示したときは、遺留分の規定に反しない限り、その意思に従うことになります(903条3項)。被相続人の持戻し免除の意思表示の方式は明示でも黙示でもよく、持戻免除の意思表示があったと解すべき事情(黙示の持戻免除の意思表示)が認められる場合も少なくありません。

特別受益の評価特別受益は、相続開始時を基準として評価します。例えば、不動産の贈与から10年後に相続開始があったとすると、その時点の当該不動産の評価で特別受益額を算定します。ただし、現実の遺産分割時がさらに2年後になったような場合は、公平を保つため、遺産分割時での評価を参考に修正することになります。

また、贈与された物件が相続開始時に滅失していた場合であっても、原則としては持戻しの対象となります。ただし、例外的に滅失も原因が天災等の不可抗力の場合には持戻しの対象とはなりません。

特別受益財産の範囲婚姻もしくは養子縁組のための贈与持参金、支度金など特に用意した費用が該当します。もっとも、社会通念上、遺産の前渡しとまではいい難い価額の贈与は特別受益といえないとされます。被相続人からの生活費の援助や、婚姻の際に挙式費用や結納金を援助していたことがあった場合も、遺産の前渡しとはいい難い金額の援助は特別受益とはいえません。

生命保険金被相続人が特定の相続人を生命保険の受取人として指定していた場合でも、生命保険金は当該相続人が固有の権利として取得するものですので、遺産には含まれませんし、特別受益にあたる遺贈ないし贈与にはあたりません。

もっとも、最高裁判所は、保険金受取人である相続人と他の相続人との間に生ずる不公平が著しい場合には、生命保険金を903条の類推適用により特別受益に準じて持戻し対象となると判断しています。また、持戻し対象か否かの考慮要素としては、保険金の額、この額の遺産総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護などに対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人および他の相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断するとしています。

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