退職金の不支給・減額条項の有効性

1.退職金の不支給・減額規定の有効性使用者の退職金支給義務は、退職金規程等により労使間で合意した条件を満たすことで退職時に発生するものであるため、その条件として、不支給・減額条項を設けることは、公序良俗に反するものでない限り適法です。退職金の不支給・減額規定は、退職金支給の条件であり、就業規則の相対的記載事項として就業規則に記載され(労基法89条3号の2)、労働契約の内容となっています(労働契約法6条・7条参照)。

裁判例では、懲戒解雇者への退職金不支給規定や懲戒基準に該当する反則が退職の原因となった者に対する50%以内の減額規定はあったものの、懲戒解雇事由該当行為の発覚が遅れ自主退職した者からの退職金請求の事案で、「懲戒解雇にともなう退職金の退職金の全部又は一部の不支給は、これを退職金規程等に明記してはじめて労働契約の内容となしうると解すべき」とした上で、「懲戒解雇に相当する事由がある者には退職金を支給しない旨の規定は存在しない」と認定し、仮に懲戒解雇相当の行為があったとしても、現に懲戒解雇をしていない以上、使用者は退職金の支払を拒むことはできないと判断したものがあります。

2.裁判例裁判例においては、使用者が設定した退職金の不支給・減額規定に基づく取扱いを全て有効としているわけではなく、(1)退職金制度の性格(特に「功労報償的性格」の程度)、(2)労働者の行為の重大性・背信性の程度、(3)使用者の損害の程度を、総合考慮して、同規定の適用の有無・減額割合について判断しているようです。

また、懲戒解雇が退職金不支給事由となっている場合でも、退職金の「賃金後払い的性格」から、労働者の行為により会社に多大な損害が生じた等の背信性が大きいと評価される行為があった場合に限定して不支給規定を適用すべきとする実務上の取扱が定着しています。

なお、長年の勤続の功労を減殺してしまう背信行為があったと評価される場合には退職金の減額が認めるとしたもの、懲戒解雇を相当としつつ退職金については3割の支払を命じた裁判例などもあります。

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