出向の有効要件

使用者が出向を命じうる旨が労働契約の内容になっている場合には、原則として出向命令は有効と考えられています。もっとも、出向は配転と異なり労務提供の相手方や労働条件の変更を伴い労働者の重大な利害に関わることから、例えば就業規則上、単に「出向を命じうる。」等という抽象的な規定があるだけでは足りないとされています。

出向命令が契約上の根拠を有するためには、就業規則・労働協約への明記や、採用時における説明と同意等によって、出向を命じうること自体が明確になっていること、出向先での基本的労働条件等が明瞭になっていること等が必要です。

また、強行法規に違反する出向命令は無効です。例えばその出向が不当労働行為の場合や、思想信条による差別(労基法3条)などの場合は無効となります。

労働契約法14条は、「使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。」と規定しています。したがって、会社側の出向命令権に一応契約上の根拠がある場合でも、その出向が「権利の濫用」にあたれば無効となり得ます。

権利濫用か否かの判断は、業務上の必要性と従業員の不利益とを比較衡量することになります。同一企業の内部における配転と比べて、出向の場合は従業員側の事情に十分な配慮が払われるべきと考えられます。

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